卓球のラバーには数多くの種類があります。
その中でも表ソフトラバーは、ラバーの種類によって性能が大きく変わるラバーです。
そのため、表ソフトラバーを使用する選手は、それぞれの表ソフトの性能や種類を理解することにより、自分のプレーをレベルアップすることが出来ます。
スピード系表ソフトで悩んだら、まずはスペクトルS1を使用することがおすすめです。
この記事ではVICTASから発売されているスペクトルS1を使用した場合のレビューをまとめました。
卓球ラバー選びに迷っている人や、表ソフトに興味がある人には参考にしてください。
スペクトルS1の基本情報
『スペクトルS1』は、日本製の縦目のスピード系高弾性表ソフトラバーです。
非テンション製のラバーですが、多くの選手に人気のあるラバーです。
縦目の表ソフトとは、ラバーの粒が縦方向に並んでいることを意味し、スピード性能が高く、ナックルボールが出やすい表ソフトになります。粒の大きさは中粒になります。
スポンジの厚さは「1.3mm」「1.6mm」「2.0mm」「MAX」の4種類があり、自分のプレースタイルや好みに合わせて選ぶことができます。
実績のある表ソフトラバーで、1977年世界選手権バーミンガム大会の男子シングルスで優勝した河野満選手が使用してラバーです。
ウーヤン選手などの中国人カットマンも使用していた経緯があります。
スペクトルはスピード系表ソフトの代名詞であるため、ボールが非常に弾んで使い勝手が悪い印象を持つかもしれませんが、実際は違います。
スペクトルS1の最大の特徴はスピード、ナックル、回転、コントール、使いやすさの総合的なバランスが良いことです。
高弾性ラバーなので、ミート打ちは十分に威力が出ます。
テンション系のらラバーに比べるとやや飛びは少ないですが、スポンジが2.0mm(厚)以上であれば十分に打ち抜ける威力があります。
表ソフトの初心者から上級者まで使える表ソフトの名作ラバーです。
以前は「スペクトル」という名前のラバーでしたが、「スペクトルS1」に名前が変わりました。
※性能は同じですが2023年10月に青色ラバーの「スペクトルS1」が発売されました!
2. スペクトルS1の特徴
特徴➀:高弾性でスピードが出るのに強打が安定しやすい
スペクトルS1は高弾性ラバーで、打球時にしっかりと初速が出るため、スピードのある表ソフトらしい弾道のボールを繰り出すことができます。
また、高弾性ラバーであるため、過剰に弾み過ぎず、適度な弾みのため、ボールコントロールがしやすいことが特徴です。
フォアハンドのミート打ちは、テンション系のスピード系表ソフトラバー、例えばVO>102やモリストSPと比較してとても安定します。
フォアハンドの弧線は、やや弧線を描きますが、基本的にはスピード系表ソフトらしく直線的に飛んでいきます。
「ほどよい弧線の描き方」と「適度な弾み」によって、ミート打ちやスマッシュの強打技術が非常に安定感があります。
相手の強打に対するカウンターも、弾み過ぎないため、カウンターが安定することも特徴の一つです。
またラバーの力でボールが飛びすぎることがないため、自分で強打でミスをした時にもなぜ自分でミスをしたのかが把握しやすいです。
これはラバーの力に頼り過ぎず、自分の力でボールを飛ばしているため、スペクトルS1を使用していると自分に描いているイメージのプレーと実際に打ったボールが合っている感覚が持ちやすいためです。
筆者自身、今までテンション系の表ソフトラバーを使用していましたが、テンション系ラバーは勝手に弾み過ぎてしまい、なぜミスをしているのかが分からない時が多々ありました。
スペクトルS1は自分のイメージしているプレーと、実際に打ったボールが合っている感覚が持ちやすいです。
この感覚は非常に重要で、なぜミスをしたのかが分かると卓球の上達の近道になります。
高弾性ラバーであり、扱いやすいスペクトルを使用することで、自分のやりたいプレーと打ったボールが合っている感覚が持ちやすくなりました。
ただし、ドライブで攻撃した場合はテンション系の回転系ラバーに比べて威力が出にくいのは欠点になります。
特徴➁:スピード、ナックル、回転の総合的なバランスが良い
スペクトルS1は、スピード、ナックル、回転の総合的なバランスが非常に良いラバーです。
サーブやドライブで回転をかけることも可能であり、ナックルボールのような変化球も出すことができます。
スペクトルS1よりもスピードの出るラバー、ナックルの出るラバー、回転の掛かるラバーは沢山あります。
しかしスペクトルS1ほど、スピード、ナックル、回転のバランスが良いラバーはありません。
表ソフトでの速攻堅守を行うにあたって、スピード、ナックル、回転の要素のバランスが良いラバー求められます。
特に1枚のラバーでフォアもバックも使用するペン表の選手にはスペクトルS1は非常に向いているラバーです。
また、スポンジはやや柔らかいので、操作性が高くコントロール性にも優れています。
特徴③:ナックルが出やすいラバーなのに扱いやすい
スペクトルS1は比較的ナックルボールの出やすいラバーです。
ナックルボールの出やすいラバーは総じてコントロールが難しく扱いにくいラバーが多いですが、スペクトルはナックルボールがでやすい割に使いやすい表ソフトラバーになります。
この辺りが名作の表ソフトと呼ばれる理由だと思います。
スペクトルS1は、他の回転系の表ソフトと比べて、自分で使用している感覚としては大きな違和感がなくて使いやすいのだけれども、対戦相手からすると明らかにスペクトルS1で打たれたボールを嫌がってミスをすることが増えます。
ペン表のバックショートや、シェークのバックハンドでのブロック時には、質の高いナックル性のブロックを出すことが出来ます。
もちろん、過剰に弾み過ぎることがないためスペクトルS1はブロックも安定しやすいラバーです。
またスペクトルS1は、スポンジがやや柔らかめであり、高弾性表ソフトであるため、台上プレーは非常にやりやすいです。
過剰に跳ねることがないので、ツッツキ、ストップの技術は台に収まりやすく、フリックもナックル性のボールを払って相手コートに押し込むことができます。
スペクトルS1に向いているプレイヤー
➀表ソフトを初めて使う選手
スペクトルS1は、表ソフトの入門編として非常に適しています。
バランスが良く、表ソフトの特性を感じやすいので、初めて表ソフトを使う選手にとって理想的なラバーです。
スペクトルを使用して表ソフトらしいミート打ちや、ナックル性のブロック等の技術を取得することで他の表ソフトラバーに変更した際にも上達が早くなると思います。
スペクトルS1が表ソフトに必要な全ての技術がやりやすく、コントロールが良いので、基本技術取得におすすめですし、そのままスペクトルS1を使い続けても良いと思います。
➁前陣でプレーをし、表ソフトらしい攻守を大切にしたい選手
スペクトルS1は、柔らかいスポンジのおかげでボールが抑えやすく、様々な技術で安定感が出しやすいです。
ナックルのようないやらしい変化球も簡単に出せるため、表ソフトをフルに生かして相手を翻弄したい選手にぴったりです。
また前陣でプレーをすることが多い、シェークのバック表の女子選手にもおすすめのラバーです。
4. スペクトルS1のデメリット
①威力不足
スペクトルS1の最大のデメリットは弾みが弱いための威力不足になると思います。
他のテンション系ラバーに比べると、ボールの威力がやや劣ります。例えば、モリストSP、VO>102などの売れ筋ラバーと比較すると、どうしても強打の威力は控えめになります。
フォアハンドの強打でボールの威力を重視する選手は他のテンション系の表ソフトを選んだ方が良いと思います。
また、ドライブを多用してチャンスメイクをしたい選手も別の表ソフトや、裏ソフトラバーの方が向いています。
スペクトルS1はあくまで前陣での速攻プレーに適したラバーになります。
また、台から離れた時の強打はボールが失速をしやすく、台から離れた際のプレーは苦手です。
自分からミート打ちで強気にプレーをするか、台の近くでのブロックやカウンターでのプレーをすることが重要になります。
②ナックルボールに慣れられると苦しい
スペクトルS1は、スピードもあり、回転もある程度かけることの出来る表ソフトラバーですが、メインの技術はナックルボールを活かした速攻堅守での相手選手の振り回しになります。
表ソフトは異質型の戦術になりますので、相手選手が普段から表ソフトと頻繁に練習をしているなど、ナックルボールを苦手としていない選手と当たった時は苦しい展開になります。
この場合、自分からサイドスピンブロックで変化を付けたり、ドライブとミート打ちの組み合わせで攻撃にも変化を付けるなどの工夫が必要になります。
③湿気に弱い
表ソフト全般に言える事ですが、雨の日は湿気の影響を受けやすいラバーです。
通常時と打球感覚が異なり、ボールを打球した時に上手く表面にボールが引っ掛からずにボールが下方向に飛び出してネットを超えないことが起こりやすいです。
5. スペクトルS1の使用感とテクニック
フォアハンド
テンション系ラバーと比較するとボールコントロールがよく弧線も安定しており、コントロールしやすいです。
強打時に金属音はせずにペコペコといった音に近い印象です。
どちらかといえば木で打っているのに近しい感触で、手に感覚が伝わりやすいラバーかと思います。
ミート打ちが得意で、強打するとある程度の威力が出ますが、テンション系ほどの威力は期待できません。
打ち抜きくようなボールを打つ時はラバーの力だけでなく、身体の力をしっかり使って自分の力で強打をしないと打ち抜けない場合があります。
個人差があると思いますが、テンション系のラバーよりもスペクトルS1の方が攻撃が安定するといった意見もあります。
具体的には、過剰に弾み過ぎない分、思い切って強打をしても台にボールが収まるためです。
特に「ツッツキに対するミート打ち」と「下回転に対する繋ぎループドライブ」と「ドライブに対するカウンター」は安定しやすい技術です。
この辺りは高弾性ラバーらしい性能だと思います。
特にツッツキ打ちに対するミスをする怖さが軽減したのは戦術を考える上でとても楽です。
また、回転が非常に掛かるわけではありませんが、繋げる程度のドライブならば十分に出来るラバーです。
ドライブはやや弧線を描きやすい印象で、繋ぎのためのループドライブなどに適しています。
ショート
スピード系表ソフトラバーのスペクトルは質の高いナックルショートを出すことができます。
相手選手から見ると止まるようなナックル性のショートはスペクトルS1の得意な技術になります。
また、スポンジが柔らかめのためショートに変化をつけやすく、相手のミスを誘いやすいです。
ブロック時のスピードの強弱もやりやすいラバーです。
ドライブを上から押さえつけてナックルショートにしたり、強く下に切ってカット性のショートにしたり、ボールの勢いを殺して手前に落としたり、強く押してプッシュ性ショートにしたり、サイドスピンショートにしたりと幅広くショートの選択肢を持つことができます。
変化をつけたショートで相手のミスを誘い、繋ぎや甘いドライブに対してはフォアでカウンターするという展開が良いと思います。カウンターは相手のボールの回転を受けにくいため精度が高くやりやすいです。
しかし、回転系表ソフトよりもナックルになる感じはしますが、当てるだけのボールでは球速はやや遅くなります。
またテンション系と比較すると弾まないラバーであるためショートに威力は出にくいです。
そのため、ボールのスピードがやや遅いので、待たれて打たれると苦しい場面もあります。
ナックルボールが苦手な選手には、より有利になったけど、ナックルボールが得意な選手には思いっきり打たれるといった展開になりやすいです。
(筆者の感想としては、ショートは一長一短ですが、体感ではややメリットの方が多い気もします。)
ナックルボールを待たれてしまう時は、プッシュ性のショートやサイドスピンショートなどの変化をつけて、相手の待ちを外すようにしましょう。
台上プレー
台上プレー(ツッツキ、ストップ、フリックなど)はかなりやりやすいです。
相手の回転の影響を受けにくく、弾みも適度なので、ボールのコントロールがしやすいです。
ツッツキやストップなどの台上プレーは回転系表ソフトよりも厳しいボールが出せる感じがします。
非テンションだから弾まなくてやりやすいです。
基本的には台上プレーで先手を取り、自分からミート打ちの速攻で攻める、もしくは相手を崩して無理にある体勢で打たせたところをナックル性のブロックで振り回す展開が得意です。
サーブ
意外とサーブが切れます。
ブロック時にナックルが出やすいので、回転がかからなそうと思うかもしれませんが、思ったより回転が掛かることもスペクトルS1の特徴の一つです。
おそらくスポンジがやや柔らかめで多少の球持ちがあるためだと思います。
相手に「スピード系表ソフトラバーなのに、こんなに切れるの?」という意外性を与えることができます。
6.スペクトルS1のスポンジの厚さのおすすめ
ペン表におすすめのスポンジの厚さ
ペン表の選手が使用するためのおすすめのスポンジの厚さは2.0mmになります。
2.0mmのスポンジ厚が威力、変化、安定性のバランスが良いためです。
ペン表の選手は基本的に表ソフトラバーで「サーブ」「フォアハンド」「バックショート」「台上プレー」などの全ての技術を行う必要があります。
そのため、ペン表の選手が使用するラバーは一つの技術に特化しているよりも、様々な技術が好きなく行う事の出来るバランスの良いラバーが求められる傾向が強いです。
スペクトルS1は、今流行りのハイテンション回転系表ソフトラバーに比べてやや弾みが弱いですが、総合的なバランスに優れる扱いやすいラバーです。
そのため、スペクトルS1はペン表に向いているラバーになります。
ただし、2.0mmのスポンジでは威力不足を感じる場合もあるかと思います。
その場合は、ラバーの種類を「スペクトルS2」、「モリストSP」などのテンション型の表ソフトに変える事や、スポンジの厚さをMAXに変更してみることが良いでしょう。
参照②:【卓球】Nittaku製モリストSPのレビュー【表ソフト】
シェークバック表におすすめのスポンジの厚さ
スペクトルS1はシェークのバック表にもおすすめのラバーです。
初心者は1.6mm、中級者以上の選手は2.0mmがオススメです。
スペクトルS1は、ブロックが止まりやすいラバーであるため、相手の強打をバックハンドのブロックで止めてナックルブロックでチャンスを作り、フォアハンドで攻撃するようなプレーに向いています。
1.6mmのスポンジは、弾みが少ないですがボールコントロールが非常によくプレーが安定しやすいことが特徴です。
また、表ソフトらしいナックルボールもスポンジの厚さが薄いと出やすくなります。
そのため、ナックルボールを活かしたプレーを身に付けるまでの間は1.6mmのスポンジがオススメになります。
中級者以上の選手は、1.6mmではボールの威力が出にくいため、2.0mmのスポンジがオススメです。
このスポンジの厚さが、ナックルボールの出しやすさと威力が最もバランスよく出やすくなります。
2.0mmのスポンジのスペクトルS1を使用して、よりスピードを出したい場合はモリストSPなどのテンション内蔵のラバーに変更し、スピードをそのまま維持しつつナックルボールを出したい場合はブースターEV、より変化を求めたい場合は変化系表のアタック8などのラバーを挑戦しいくと良いと思います。
参照①:【卓球】Nittaku製モリストSPのレビュー【表ソフト】
7.スペクトルS1の寿命
表ソフトラバーの寿命は4~5カ月と言われています。
練習量にもよりますが、粒の表面の網目が擦れて消えてしまっているとラバーの変え時です。
表面の網目が消えると、摩擦が減ってボールに回転が掛かりにくくなり、打球に伸びがなくなります。
ただ、表ソフトラバーは長く使うほど回転が掛かりにくくなりますが、ナックルが出やすくなるといった特徴もあります。
そのため、上級者ではあえて長めにラバーを使用するなどの工夫をされている方もいるようです。
表ソフトは裏ソフトラバーの変え時が難しいので、期間を区切って定期的に買い替えることもおすすめです。
8.スペクトルS1に合うラケット
スペクトルS1は、7枚合板のラケットとの相性が良いです。
木材の5枚合板のラケットでも良いですが、弾みが足りなくなるため7枚合板の木材ラケットが相性が良いと思います。
5枚合板なら相手の攻撃を変化ショートで止めてカウンターをしていくタイプ、7枚合板なら自分からどんどん攻めていくタイプになると思います。
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まとめ
スペクトルS1は、スピード・コントロール・ナックルのバランスが非常に良いラバーです。
バランスの良い性能と使いやすさから、多くの選手に愛されているラバーで、初心者から上級者まで、幅広いプレイヤーにおすすめできます。
特に、表ソフトを初めて使う選手や、表ソフトらしい性能をフルに生かしたい選手に最適です。
表ソフトに興味があるなら、ぜひ一度試してみて欲しいラバーです。
自分に合ったラバーを見つけることで、卓球がさらに上達すると思います。
この記事が参考になれば幸いです。
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